未来の働き方: 職場を変えるバーチャルリアリティ

これまでも、時代とともに、働き方を一変させる新たなイノベーションが生み出されてきました。綿繰り機、コピー機、パソコンがそうであったように、今また、バーチャルリアリティ(VR)技術がオフィスの外観や機能を大きく変えようとしています。たとえそれが、現実世界に実際に「存在」するオフィスであってもです。

ヘッドセット、コントローラ、インターフェイスの急速な進化に伴い、今後10年で、多くの人の生活が劇的に変化するに違いありません。では、具体的にどのような影響があるのでしょうか。

医療分野、特にメンタルヘルスに従事している場合、VRの導入により、新しい画期的な方法で患者を治療できるようになります。心理学者であり、南カリフォルニア大学の医用バーチャルリアリティ部門で責任者を務めるSkip Rizzo氏は、「現在、医療システムは混乱状態にある」と言います。「コストを削減し、より良いサービスを提供するための方法を見つけなければなりません。その鍵となるのがVRシミュレーションです」

Rizzo氏は、自閉症、不安神経症、PTSDを有する患者の治療にVRを取り入れています。ストレスの多い状況を疑似体験したり、過去のトラウマを再体験したりすることで、患者の症状が改善されます。VRは身体的な病気の治療にも役立ちます。「脳卒中や脳損傷の患者のために、VRを使った全身エクササイズを開発しました。単調でつまらないリハビリをゲーム感覚で行うことができます」

設計者やエンジニアは、他者と連携するためのツールとして既にVRを取り入れています。現在では、インタラクティブな仮想空間を利用し、世界各国のスタッフによる3次元コラボレーションが可能になっています。Jaguarをはじめとする自動車会社は、VRを導入して車の設計を最適化し、世界中のチームメンバーが設計データを同時に利用できる環境を整えています。さらに同社は、新型I-Paceコンセプトカーを公開するにあたり、世界初となるVRを駆使した発表イベントを行い、自動車ファンを沸かせました。

このように、より効率的で、より直観的なシステムは、企業の収益に大きなメリットをもたらします。Dassault Systemes USAの副社長Steven Madge氏は、「VRによって設計プロセスが迅速化され、製品をより早く市場に投入できるようになる」と期待を寄せています。

ジャーナリズムやエンターテインメントの業界では、VRにより、コンテンツの新たな利用方法やこれまでにない体験を提供できます。VRLAの共同創設者Jessica Ward氏は、「今後、映画とゲームは双方向メディアに統合される」と考えており、「将来的には、多額の予算を投じたすべての映画にVRが導入され、観客が映画の世界に入り込めるようになるでしょう。自分自身がキャラクターになれるのです」と話します。

さらに、ほとんどの従業員にとってのバーチャルリアリティのメリットは、仕事の場所を選ばず、あらゆる境界を越えて互いに連携できることです。「やがては、全国各地のオフィスへ出張する必要がなくなるでしょう」とEmblematic GroupのEren Aksu氏は話します。「世界中どこにいても、複数のスタッフが同じ部屋に集まり、3Dプレゼンテーションをリアルタイムで実行できるようになります」

今はまだ、これらの事例はいずれも現実味がないかもしれません。Holojam Inc.の共同創設者Michael Gold氏は、「VRについては、真の可能性の模索が始まったばかり」だと言います。「バーチャルリアリティ業界はまだ初期段階です。いずれ、より多くの人がVRを活用し、あらゆるオフィスにVRが導入される日が来るでしょう」